相変わらずである。
厚生労働省の資料は、どうしてこうも見づらいのか。
文字ばかりのパワーポイント。
図があると思えば、細かい数字がびっしり並んだ表。
正直、
「いったい何を伝えたいんだ?」
と思いながらページをめくることになる。
しかし、である。
今回の令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項についてを読み込んでいくと、
「これはちょっとした改定ではない」
ということに気づく。
むしろ一言で言えば、
前代未聞の“後追い修正型”報酬改定
と言っていい内容だ。
きっかけは「平均工賃月額の算定方法」
今回の大きなポイントは、
就労継続支援B型の基本報酬区分の見直しである。
そもそもの発端は令和6年度改定。
このとき、平均工賃月額の算定方法が変更された。
従来は単純に「工賃総額÷人数」で計算していたものを、
利用日数などを考慮する形に見直した。
具体的には、
年間工賃支払総額 ÷(年間延べ利用者数÷年間開所日数)÷12
という計算式に変わっている。
この変更の結果、何が起きたか。
平均工賃月額が
想定よりも約6,000円も上昇してしまったのである。
当然ながら、報酬区分は
- 上位区分の事業所が増える
- 支払い報酬が増える
という結果になる。
つまり、
制度を変えたら、想定以上にお金が出ていく構造になってしまった。
というわけだ。
そこで出てきた「令和8年度の緊急修正」
そこで今回の改定。
やったことはシンプルだ。
報酬区分の基準額を引き上げる。
ただし引き上げ幅は、
平均工賃の上昇幅 約6,000円
→ その半分の 3,000円だけ引き上げ
という設定になっている。
つまり、
制度変更で上がった平均工賃に合わせて
報酬区分のハードルも上げる
という調整である。
要するに、
「想定より上がったので、基準を上げて帳尻を合わせます」
という話だ。
さらに前代未聞なのはここから
今回の改定は、ただの基準変更では終わらない。
影響が大きすぎるため、
かなり特殊な「配慮措置」が用意されている。
例えば、
① 区分が上がっていない事業所は対象外
令和6年度改定の前後で
区分が上がっていない事業所は見直し対象外。
つまり、
「影響が出そうなところだけ調整する」
という、かなりピンポイントな対応。
② 報酬が下がりすぎないよう中間区分を新設
もし今回の見直しで
区分が下がる事業所が出た場合でも、
基本報酬の減少を約3%程度に抑えるため
中間区分を新設する
という配慮まで入っている。
これ、かなり異例。
普通の改定なら
「区分が変わるならそれまで」
で終わる話だからだ。
③ さらに応急的な単価調整
それでも影響が出るため、
就労継続支援B型では
所定単位数の1000分の984という応急的な単価調整まで入っている。
ここまで来ると、
制度設計というより
「とにかく影響を抑えるための応急処置」
という印象すらある。
つまり今回の改定はこういうこと
整理すると今回の報酬改定は
- 令和6年度改定で算定方式変更
- 平均工賃が想定以上に上昇
- 上位区分の事業所が増加
- 報酬支払いが増える
- 令和8年度に区分基準を修正
- 影響が出ないよう複雑な配慮措置
という流れである。
簡単に言えば
制度変更 → 想定外 → 後から微調整
である。
パワポは見づらいが、実は大きなメッセージ
冒頭に戻る。
確かに厚労省の資料は見づらい。
文字も多いし、数字も多い。
だが今回の資料をよく読むと、
はっきりとしたメッセージが見える。
それは、
制度を動かしながら調整していく
という、
かなり実務的な行政の姿である。
そしてもう一つ。
今回の改定は、
就労継続支援B型の報酬制度が
まだ「完成形ではない」
ということも示している。
今後もこの分野は、
おそらく何度も修正されていく。
そういう意味では、
今回の令和8年度改定は
単なる「小改定」ではない。
制度運用の難しさが表れた、かなり象徴的な改定
と言えるだろう。
そしてそれを理解するためには、
あの
文字だらけのパワーポイント
を読み解く必要があるのである。
今回の報酬改定の資料は厚労省のサイトで公開されています。
興味のある方はぜひ一度見てみてください。

